いよりんの独り言

日々の想いを綴っています

いつか辿り着ける陽のあたる場所ー閉ざされた心③ー

彼には2つ上の姉がいた

学年で一、二位を争うくらいの優秀な生徒で、彼が中学に入学した当初は彼女の弟として注目されたし、もちろん学力も期待された

注目されるのは別に嫌ではなかったし、姉を見習って勉強もしたので、彼自身も成績は悪くなかった

しかし、姉が中学を卒業し、中学2年に進級すると彼の身に災難が降りかかる

 

空手を習っていた彼は、周りから“型がきれいだね”と褒められ喜んでいたのだが、

噂を聞きつけた不良グループが近づいてきたのだ

“仲間に入らないか”と誘ってきた

喧嘩要員として、空手を習っている彼が欲しかったようだ

学校へ行けば、執拗に纏わりつかれる

彼は学校へ行くのを嫌がるようになった

 

だが、父はそのつらさをわかってはくれなかった

ただただ“学校へ行きなさい”の一点張りだった

 

勉強を頑張っても褒めてくれない

空手を頑張っても師範や周りの人たちのように褒めてくれない

“お父さんは、不良グループに絡まれて苦しんでいる気持ちなんかわかってくれないんだ”

まただ

彼は父親に失望した

 

“行けっていうなら行くさ。俺のことなんかどうなってもいいんだろう!”

自棄になった彼の中で心が壊れた始まりだった

 

 

ガラスに入った小さなヒビのように

少しずつの振動によって、彼の心は壊れていった

 

それからまもなく、彼は不良グループの先頭に立っていた

授業をさぼり、喧嘩に明け暮れるようになった

 

*この話はノンフィクションです。実録小説「いつか辿り着ける陽のあたる場所」の外伝です。