彼には2つ上の姉がいた
学年で一、二位を争うくらいの優秀な生徒で、彼が中学に入学した当初は彼女の弟として注目されたし、もちろん学力も期待された
注目されるのは別に嫌ではなかったし、姉を見習って勉強もしたので、彼自身も成績は悪くなかった
しかし、姉が中学を卒業し、中学2年に進級すると彼の身に災難が降りかかる
空手を習っていた彼は、周りから“型がきれいだね”と褒められ喜んでいたのだが、
噂を聞きつけた不良グループが近づいてきたのだ
“仲間に入らないか”と誘ってきた
喧嘩要員として、空手を習っている彼が欲しかったようだ
学校へ行けば、執拗に纏わりつかれる
彼は学校へ行くのを嫌がるようになった
だが、父はそのつらさをわかってはくれなかった
ただただ“学校へ行きなさい”の一点張りだった
勉強を頑張っても褒めてくれない
空手を頑張っても師範や周りの人たちのように褒めてくれない
“お父さんは、不良グループに絡まれて苦しんでいる気持ちなんかわかってくれないんだ”
まただ
彼は父親に失望した
“行けっていうなら行くさ。俺のことなんかどうなってもいいんだろう!”
自棄になった彼の中で心が壊れた始まりだった
ガラスに入った小さなヒビのように
少しずつの振動によって、彼の心は壊れていった
それからまもなく、彼は不良グループの先頭に立っていた
授業をさぼり、喧嘩に明け暮れるようになった
*この話はノンフィクションです。実録小説「いつか辿り着ける陽のあたる場所」の外伝です。