母親には子どもに対する愛情はあったと思う
しかし、長男の嫁という立場で、同居する姑が財布の紐を握っており、不自由な生活を強いられていた身で
更には出世から遠ざかり、自分の中にこもる夫に“家を出てほしい”“財布を握らせてほしい”といくら相談しても無駄でしかなかった
やはり子どもへの対応は疎かになっていたのだろう
そんな中、彼の心が壊れる始まりが起きる
彼は絵画コンクールで賞を取った
もらった賞状を持ち帰って、父親に見せたところ、
滅多に関心を示さない父親が
“そうか。じゃあ、額を買って飾らないとな”
と言ってくれた
彼がどれだけ嬉しかったことか
だが、それは果たされなかった
父親の言葉は賞状を見せた息子に何か言わなければと咄嗟に出た、単なるその場凌ぎの言葉だったのだ
賞状のことなどすっかり忘れてしまった父親
額を買うどころか、その後、彼の賞状はとうとう日の目を見ることはなかった
“お父さんは僕に関心がないんだ”
中学生だった彼の心は踏み躙られ、次第に荒み始めていく