彼は自死を決意した
精神病患者として人生を存えるより、脳が正常なうちに自分の生涯を終わらせる方がずっといい、という考えに辿り着いたのだ
それは自分を見捨てた親への復讐でもあった
“俺を見捨てたことを後悔すればいい”
そんな思いだった
彼は思いきり自分の舌を噛んだ
が、思いきり噛んだつもりが血管を噛みきれていなかった
“思いっきり噛むんだ!せいの、いち、に、のさん!”
自分に言い聞かせて、もう一度強く舌を噛んだ
が、またダメだ
“もう一回!今度はちゃんと噛み切るんだ!”
もう一度。もう一度。もう一度。
舌を噛み切ろうと何度も何度も試みた
だが、力が出ない
断ち切れない自分の弱さに涙が溢れてきた
“なんで噛み切れないんだよぉ”
涙と一緒に鼻水も出て来て、顔がぐしょぐしょになっていた
“なさけない。なさけない。なさけない…”
こんなに酷い目にあっているのに、弱さで死ぬこともできない
そんな情けない自分にまたどうしようもなく泣けてきて、枕に顔を埋めて泣きじゃくった
それがどんな音だったのかはわからない
“廃人”として不様に生きていくしかないのだと脳が認識したとき、それが彼の心が壊れた瞬間だったのだと思う
*この話はノンフィクションです。「いつか辿り着ける陽のあたる場所」の外伝です。
親に見捨てられ、壊れた心を抱えながら生きながらえている。そうして、薬に依存していくしかなかった彼の半生を綴ったものです。
「薬物依存症」に罹ってしまった人間を“自分が悪いんだろ!”と誹謗中傷する人がいるかもしれませんが、生きづらさを感じ、心の居場所を失くしてトー横に集まり薬に依存する彼らをただ単に批難してはいけないと思います。
彼らを生んでいるのは親や社会です。
もっと言えば、少子化問題、ただ子どもを増やせばいいって問題じゃないんです。親が安心して子どもを家庭で育てていける環境をつくってやらないとダメなんですよ。
「親はなくても子は育つ」じゃないんです!
家庭環境、教育環境がしっかりしていなければ子どもの心は育たないんです!
毒親なんかもってのほか、早く子どもを保護してください!
親に人生を台無しにされた彼のような悲劇が子どもたちに起こらないことを願うばかりです。