病院と称されたそこは精神疾患者が収容されるサナトリウムだった
とんでもないところに入れられたと悟った彼は
“嫌だ!検査だけって言ったじゃないか!家に帰る!”
そう言って暴れ出した
しかし、がっちりと押さえつけている男たちを払い退けることはできず、抵抗虚しく彼は注射を打たれた
“うっ...”
彼の意識は遠のいていった
目覚めたとき、彼は病院の廊下に置かれたベッドに寝ていた
朦朧としていた意識が次第に戻ってきて、自分がここへ連れてこられたこと、暴れて注射を打たれたことを思い出した
《ああ、ここは病院か》
自分が置かれている現実を理解して、彼はベッドから起き上がろうとしたが、体が動かなかった
“ん⁉︎”
見ると、手足がベッドに縛りつけられていた
“えっ、なんで”
振り解こうと体を動かしてみたが、無駄な抵抗だとすぐさま悟った
それからどれくらい時間がたったのだろうか
考えることをやめて、うっすらと夜が明けていく様をぼんやりと眺めていた
すると、誰かが近づいてくる気配を感じた
《解きに来てくれたのかな?》
彼は小さな期待を抱いたが、すぐにそれは恐怖に変わった
近づいてきたのは病院に入院している精神疾患者のおばさんだった
ゴムが伸びきっているよれよれのジャージを履いていて、顔を見ると目の焦点が合っていない上によだれを垂らしている
《な、なに⁉︎》
彼女は彼を見つけて寄ってきた
そして、いきなり彼のズボンを下ろし始めた
“や、やめろ‼︎”
声に出して叫んだつもりだったが、あまりの恐怖に声にならなかった
逃げたくても逃げられない
おばさんは彼のズボンを下ろしてしまうと、今度は下着に手を伸ばした
“なにをする‼︎やめろー‼︎”
彼の声にならない叫びに助けにくる者はなかった
*この話はノンフィクションです。
「いつか辿り着ける陽のあたる場所」の外伝です。